1. フラグメンテーションとは?LANでの意味と影響
LAN(ローカルエリアネットワーク)におけるフラグメンテーションとは、IPパケットが設定されたMTU(Maximum Transmission Unit)を超えた場合に、パケットを複数に分割して送信する仕組みです。
MTUとフラグメンテーションの関係
- MTUの標準値:Ethernetでは1500バイトが一般的
- フラグメンテーション発生条件:送信するデータサイズがMTUを超える場合
- 問題点:
- 分割されたパケットが複数回送信されるため、ヘッダのオーバーヘッド増加
- 受信側での再構築に負荷がかかり、CPU使用率が上昇
- パケットロス時に再送が必要となり、通信効率が低下
例えば、大容量のファイル転送中にフラグメンテーションが頻発すると、ネットワーク遅延が目立つことがあります。
特にリアルタイム性が求められるVoIPや動画配信では、品質劣化の原因となります。
2. ジャンボフレームとは?通常のMTUとの違い
ジャンボフレームは、標準の1500バイトを超えるペイロードを持つEthernetフレームのことを指し、最大で9000バイト程度まで拡張可能です。
ジャンボフレームの特徴
- 登場背景:1998年、Alteon社によって初めて導入
- 標準規格外:IEEE 802.3では定義されていないが、多くの機器がサポート
- 用途:サーバ間の大容量データ転送、バックアップ、iSCSIストレージなど
ジャンボフレームを利用することで、フレームあたりのヘッダ数が減り、処理するパケット数が少なくなるため、CPU負荷やオーバーヘッドを削減できます。
3. フラグメンテーション vs ジャンボフレーム:どちらを使うべき?
ジャンボフレームはフラグメンテーションの回避策として有効です。
ジャンボフレームの利点
- フレーム数削減によりCPU負荷が軽減
- 帯域利用効率の向上(Goodput改善)
- 大容量転送におけるスループット向上
注意点
- ネットワーク経路上の全ての機器がジャンボフレーム対応である必要あり
- 未対応機器があるとパケット破棄や断片化が発生
- WAN接続や低速リンクでは逆に遅延が増す場合も
4. 設定手順と注意点:LANでの導入方法
ジャンボフレームを導入する際の基本手順は以下の通りです。
設定手順(例:MTU 9000 バイト)
- NICの設定
- Windows: デバイスマネージャ → ネットワークアダプタ → 詳細設定 → Jumbo Packet → 9000に設定
- Linux:
ip link set dev eth0 mtu 9000
- スイッチの設定
- スイッチの管理画面やCLIからMTUを9000に設定
- 全機器統一
- 経路上のルータ、スイッチ、サーバすべてを同一値に設定
注意点
- Path MTU Discoveryを有効化し、経路途中でのフラグメンテーションを回避
- DF(Don’t Fragment)ビットを利用してMTU問題を検出
5. 実際の運用:効果・課題・適した場面
ジャンボフレームは以下のようなシーンで特に有効です。
有効な活用シーン
- LAN内での大容量バックアップや仮想マシンイメージ転送
- iSCSIストレージやNASなどの高速ストレージアクセス
- サーバ間通信が10GbE以上の高速LANで行われる場合
注意が必要なケース
- 異なるベンダーの機器が混在するネットワーク
- WAN接続を跨ぐ環境(ISP機器はジャンボフレーム非対応が多い)
- QoS設定やファイアウォールのMTU制限がある場合
考察とまとめ
ジャンボフレームは、LAN内での大容量通信において通信効率を飛躍的に高めます。
しかし、その効果を発揮するにはネットワーク全体のMTU統一が不可欠であり、導入時には経路確認とテストが必須です。
一方、フラグメンテーションは仕組みとしては便利ですが、オーバーヘッド増加や再送発生のリスクがあるため、可能な限り回避すべきです。
ジャンボフレームを導入できない場合は、適切なMTU調整やMSS設定で対策を行うことが推奨されます。
まとめ
- フラグメンテーションはパケット分割による効率低下を招く
- ジャンボフレームは9000バイトまで拡張可能で効率改善に有効
- 導入には全機器のMTU統一が必須
- LAN内の大容量通信やストレージアクセスで特に効果的
- WAN環境や異機種混在環境では慎重な設計が必要
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